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04 10月 2025
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千夜物語で百物語 第七夜「薔薇」 河本 享

「薔薇」

 

『占の城 千夜物語』がまだレジャックビルにあった頃の話

 

レジャックにあった頃の千夜物語の鑑定ブースの配置は独特だった。

 

入り口から2ブース、
その奥にバックヤード、
バックヤードに入らず左に行くと1ブース。

 

ブース入り口にはそれぞれカーテンが掛けてあるが
バックヤード以外はカーテンを開けておくのが基本で
どのブースからも受付を見る事ができた。

 

その日の鑑定師は外山先生、
河本と既に千夜物語を去った青藍先生(仮名)の3人。

 

いちばん奥のブースに外山先生、
入口にいちばん近いブースに青藍先生、
バックヤードに近いブースに河本が陣取り鑑定していた。

 

占い屋はお客様がひっきりなしにご来店する商売でもない。
お客様を待つのも仕事のうち。その時は外山先生と河本がお客様を鑑定していた。

 

鑑定中は暦を見たり、カードを並べたりと
意外にお客様をじっと見つめる事は少なく
それがお客様には不誠実な対応だと感じられてしまう事もあるかと思うが
占術によっては仕方のない事なので許して欲しい。

 

卓にカードを並べ俯いた状態で鑑定中、
ふと俯いたまま目線だけ少しあげると
ヒラリと長いフレアスカートがお客様の後ろを通りバックヤードに入って行くのが見えた。

 

正面にはお客様がおり、
伏目がちな目線からスカートの主の顔を確認する事はできなかったが
雰囲気で運営のユウさんが来たと直感した。

 

しかし、他所ごとに気を取られては仕事にならぬ。
さっと意識を戻し無事鑑定を終えた。
程なくして外山先生も鑑定を終えブースから出てきた。

 

「外山先生、さっきユウさん来ましたよね?バックヤードに入っていったのは見たけど帰られたの見ました?」

 

河本がいたブースとバックヤードは薄い壁が1枚あるだけ。

バックヤードからは気配もなく物音ひとつしないので心配になって覗いてみたが誰もいなかった。
ただ自分が鑑定している時はとにかく喋るので退出に気が付かなかったことも充分考えられる。

 

「ユウさん、確か鑑定中に来たよね?スカートだけチラッと見えたんだけど」
外山先生も鑑定中に気がついたという。

 

「えっ、誰も来てないけど」
隣のブースから青藍先生の声。

 

青藍先生はユウさんが来たと思われる時間は鑑定しておらず、
また青藍先生のブースの前を通らねば店内には入れない。

 

見落とす筈がない。

 

「確かにしっかり顔を見たわけじゃないけど誰か奥に…」

 

河本と顔を見合わせそう言う外山先生に
「誰も前を通ってなんかないわよ?」
と不思議そうな顔で答える。

 

青藍先生は嘘をつくような人ではなく信頼できる先生だ。

 

「外山先生もスカートをご覧になったんですよね?どんな柄でした?せーので言いませんか?」

 

河本の申し出に外山先生が頷く

「せーの」

『白地に黒色の大きなバラの花柄のフレアスカート』

 

同じだった。長さや質感も違う事なく。

 

その後も外山先生と河本が一緒のシフトになると
色々不思議な事が発生したがその事はまた次の機会に。

 

 

 

文章:河本 享

 

 

 


24 8月 2025
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千夜物語で百物語 第五夜「ソワレの前に」後編 河本 享

「ソワレの前に」(後編)

 

 

有料公演はかつての芝居仲間が会場係として公演をサポートしてくれる。
そんな仲間の存在は必要不可欠だ。

 

「マチネのチケットはほぼ完売。自由席だから空いている席をきちんと把握して遅れてきたお客様を上手くご案内して」

 

おかみさん役が当たり役だった元芝居仲間がちゃきちゃきと他のスタッフに指示をとばす。

芝居の幕が開けると空席の場所を確認し会場係は一旦休憩。

 

「今、8列目の真ん中辺りにひとつ、15列目端から3番目辺りにひとつ空いてる感じかなぁ。」

 

モニターを確認して若いスタッフが空席状況を把握。
劇場のドアからかすかに漏れ聞こえる芝居の音響。

前日のゲネプロを観ているのでおおよその場面が想像できる。
暗転中や転換中で芝居に影響が出ないタイミングをねらって席まで誘導するため芝居の進行にも気をつかうのだ。

芝居が佳境に入る少し前、
ふたり連れのお客が汗を拭き拭き会場へ。

ご案内できる席が離れてしまうなぁと会場係はモニターで空席を確認する。
するとどうだろう先程までひとつしか空いてなかった8列目の空席の隣も空いている。
気にはなるが芝居の進行もあるので急いで席に案内し、再度空席を確認。空席残数1。

 

「ねぇ誰かお客様が帰られたの、見た?」

 

案内から受付に戻った若いスタッフが待機スタッフに確認する。

この劇場は出入り口が少なく
演出やセキュリティ上の理由で上手に続くひとつの出入り口を封鎖し
警備係を置きどの出入り口から出ても必ず受付前を通らねば外には出られないようになっていた。

立ち見ができそうな空間はあるが
そこも演出上の理由で客が入らないよう監視の目があり立ち見をしていた客を見た人はいない。

そこまで広くない客席で誰か立ち上がれば
目立つしモニターに映らないわけがない。

芝居が終盤に差し掛かる前に最後まで空いていた席にもお客が入りマチネが終わる。

 

もぎった半券の枚数からも満席が確認でき、
『満員御礼』と楽屋に歓喜の声があがったのはソワレの前だった。

 

 

 

文章:河本 享

 

 

 

 

 


23 8月 2025
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千夜物語で百物語 第五夜「ソワレの前に」前編 河本 享

「ソワレの前に」(前編)

 

所属している素人演劇での出来事。

 

私が属している演劇の団体は元々演劇のワークショップから有志が集まってできたものなのだ。
年に一度有料公演をしワークショップで縁が出来た方々も観に来てくださる。
知り合い率高しのアットホームな公演なのである。

 

「ベーさん、亡くなったんだよ」

 

私と同い年で団体1期生の幸さんが小屋入り前の稽古の時話しかけてきた。
べーさんは幸さんの学生時代からの友人でたまたま私も同学年という事でつるんでいた。

脳血管疾患で急な事だったらしい。

べーさんは恰幅の良い男性で前の年のワークショップでは西郷隆盛の役を演じたのだった。
浴衣に兵児帯姿がいかにも西郷どん。
その年の有料公演でも西郷隆盛が出てくるのでべーさんに演じて欲しかったなぁなんてその訃報を知る前、稽古中に話していた事もあった。

 

日は過ぎて小屋入りの日。

 

公演3日前から小屋(劇場)に入り舞台の設営、
照明の設定、音響や映像の調整。

この頃から芝居がやりたくて集まっている集団の中で私はあえて裏方(映像と小道具担当)をしていた。
公演中は下手舞台袖に陣取ってパソコンをカチャカチャ操作するのだ。

公演当日、マチネとソワレの2公演。(昼公演と夜公演)
両方ともチケットはほぼ完売。
消防法の事もあり立ち見や椅子の増設もできず案内係はリアルタイムで座席数を確認するしかない。
下手袖にあるモニターからも空き席が無いのがよくわかる。

マチネ公演が始まり舞台袖は必要最低限の灯り。

出番に合わせ袖で待機する仲間を応援しながら台本首っ引きで映像を切り替える。
暗転、板付きの為、袖で待機していた仲間達全員がそろそろと舞台上に移動してゆく。
しばらくは舞台上が賑やかだ。

ふと背後に人の気配。

音もなくその気配はこちらに近づいてくる。
舞台から目を離すわけにはいかないがそっと視界の端に目を向ける。

どっしりとした浴衣姿、
兵児帯に小刀を携えて舞台を眺めるように立っている出演者ではない誰か。

 

「まさか、べーさん?」

 

しばらくするとその気配は消えた。

実は同じ時間に受付案内係も不思議な現象に遭っていた。

 

 

文章:河本 享


21 8月 2025
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千夜物語で百物語 第四夜「大家と店子」河本 享

「大家と店子」

 

以前住んでいたマンションでの事である。

田舎なので大家さんの母屋、
離れと同じ敷地に建つ新築中低層賃貸マンション。
立地条件は良く完成と同時に入居した。
同年代の店子も多くご近所付き合いも苦ではなく
会えば挨拶や立ち話をするような友達も何人かできた。

ある日御高齢だった大家さんのおばあさまが亡くなったようだと友達のひとりから電話があった。
詳細はわからないが今日がお通夜だと言う。

たまたま葬祭業者の方をお見かけしその事を知り、
店子としてお通夜に参列すべきかとの相談だった。

同じ敷地内に建っている賃貸物件の店子だがこの時代、
建物管理は管理会社が仲介し、直接大家さんとやり取りする事もない。
数人の店子達で話し合って敢えて参列しないことにした。

そして夕方、
室内でゴソゴソしているとどこからともなくお線香の香りが漂ってくる。

ああそういえばそろそろお通夜の時間か。

しかしさすがお線香、
同じ敷地といってもだだっ広い駐車場をはさんで6階まで
線香の煙は上がってくるものなのだなぁと呑気に同居人に尋ねてみた。

「お線香の香りってここまで漂ってくるもんなんだねぇ」

「線香?そんな匂いしないよ?」

「いやさっきからふわふわ漂ってるって」

外に出てたら香りの出所がわかるだろうと慌てて掃き出し窓を開け
ベランダに出てみたがベランダでお線香の香りはしない。

また南からの風で大家さんのお宅はマンションより風下になる。

やっぱりお通夜、行っておいたほうがよかったのかもしれない。

 

文章:河本 享

 

 

 


14 8月 2025
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千夜物語で百物語 第三夜「通り道 2」河本 享

さて、

お盆も真っ盛りですが、

夜はいかがお過ごしでしょうか?

 

この百物語は、実話に基づいたの怪談であります。

そんな怪談話を文章にしたためていると、

不思議な出来事が起こるらしいですよ・・・。

 

では、第3夜へ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

百物語 第3夜

 

「通り道 2」

 

実は河本の自宅にも何かが通り抜ける空間がある。

リビングのドアと勝手口のドアを結んだ空間で寝ると何かの気配が…

と、ここまで書き進めていたら家鳴りとかではないパシッという音が。

これは警告音か?と戸惑っているとさらにもう1回パシッ。

はい、この話はここまで。

(実は「ここまで」としておきながらも数時間後、自宅の別の場所で推敲していたらまたパシッという音が聞こえた事をつけ足しておきます)

 

文章:河本 享

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 


13 8月 2025
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千夜物語で百物語 第二夜「通り道」河本 享

今回で第2回目となります「千夜物語で百物語」

 

連日続いている暑苦しい夏が、

少しでも涼しくなれますように。

 

それではこちらから

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

百物語 第2夜

「通り道」

戦後すぐに建てられ
今は取り壊されてしまった田舎の民家での話。

土間が広く以前は耕作の為の牛が飼われており、
北側にある台所も土間で大きなかまどがあった。

かまどの横には勝手口があり、
廊下をはさんだ先に2階への階段がある。

夏場は台所から登った階段の先の2階の部屋の窓をあげておくと
風が吹き抜けて涼しく過ごすことができたそうだ。

寝苦しい暑い夏の日の夜、
クーラーの無いその部屋の男は吹き抜ける風を最大限利用しようと
勝手口、階段、部屋の窓の一直線に風が吹き抜ける場所に布団を敷いて横になった。

襖があり部屋の出入り口にあたるのでそこを避けていたのだが暑さに負けたという。

予想通り吹き抜ける風は心地よくすぐに眠りに落ちた。
が、しばらくするとギッギッと階段を登ってくる音で目が覚めた。

階段をゆっくり踏みしめる音はだんだん近づいてくる。

「こんな時間に誰が?明かりもつけずに」

そう思った刹那、
黒く大きな影が寝ている男に覆い被さった。

何をするわけでなくのしかかり身体の自由を奪う。

声も出せず耐えるしかない。

吹き抜ける風もピタリと止まり嫌な汗で全身じっとりしてきた。

どれくらいの時間が経ったのだろう
木枠のガラス窓を鳴らすような強い風が
急に吹き抜け影はかき消すように消えていった。

 

文章:河本 享

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

次回、第3夜は、明日の更新となります。

 

 

 


29 7月 2025
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千夜物語で百物語 第一話「パチンパチン」河本 享

7月も終りに近い中、
すでに気温は真夏✕2以上に振り切ってます。

夜は夜で連日の熱帯夜を更新中🥵🔥
冷房なしではそのまま昇天しまいそうな今日此の頃😇

そんな暑い最中に
少しでも気分的に涼んで欲しいと思い、
夏恒例の怪談話を千夜物語でもやってみることにいたしました。

何回までつづくかはネタ次第ですが、
「千夜物語で百物語」と題しまして、
これから一話ずつ怪談話を披露したいと思います。

今回は第1回目ということで
河本 享先生に話を綴っていただきました。

寝苦しい夜に読んで、
涼しさを感じていただけたらと思います・・・

それでは、どうぞ。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『パチンパチン』

伯父の隣家には高齢の女性がひとりで住んでいた。

隣家の女性は常日頃から伯父の敷地に伸びてしまう生垣の枝を
「ごめんねぇわるいわねぇ」と剪定していた。
草花一本伯父の敷地にはみ出させることなく、
いつも整然と整えられていたのを見た記憶がある。

それから数年後、
隣家の高齢の女性は病いに臥し他界。
主人を失った屋敷は、
時々様子を見に来る親戚筋の方が
手を入れるが庭が荒れるのには時間が掛からなかった。

伯父宅に立ち寄った際、
駐車場から何気なく覗いた隣家の庭先には
膝丈まで伸びた夏草が生い茂り
庭木も好き勝手に枝を張っているようだった。

「時々手入れに来てくれる人がいるんだけどねぇ、まあすぐに伸び放題になっちゃうのよ」

伯母は母屋へと招いてくれながらふと立ち止まって
隣家との境を眺めながらこっそり

「お父さんがね夜中に剪定鋏で枝を切るパチンパチンって音が聞こえるっていうのよ。嫌よねぇ。」

伯母の目線の先にあったのは隣家との境界線。

生垣の枝も葉もこちらに伸びていない。

きれいな一平面に整った生垣が夏の日差しを受け止めていた。

 

文章:河本 享

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

👻


01 1月 2025
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西洋占星術で観る2025年の全体運 by 河本 享

2025年 星の戯言

 

2024年11月に冥王星がみずがめに移動したことで、社会全体に大きな変化があるのではと期待と不安が入り混じっておりましたが、それに引き続き2025年3月に海王星がうおからおひつじへ。

それを追うように5月には土星がうおからおひつじに移動します。

その後いったん海王星は10月、土星は9月にそれぞれうおへ戻り、本格的に次のサインに移るのは2026年になります。とはいえ海王星の移動は理想や無意識など感覚や感情を重視するような流れを、土星の移動は新たな課題に直面したりそれまで見て見ぬふりをしてきた問題が噴出するのではないかと一抹の不安を感じさせます。

さらに7月には変革の星天王星がおうしからふたごへ。これはコミュニケーション的なものの変革があるのではと予測します。

大きな天体が動くということで混乱を想像するかもしれませんが、本格的な変化の前の各々の準備期間として活用してみるのも良いのではと考えもします。望まぬ事柄の前兆が感じられるのであれば立ち上がりな流れを変える動きができるのかもしれません。

 

続いて2025年の春分図を眺めると、太陽、海王星、ドラゴンヘッド[i]、土星がオーバーロード[ii]している6ハウスの存在が目立ちます。6ハウスは行政・健康・衛生・軍隊・警察を示し、その関連の事柄に注目が集まるものの太陽と海王星のコンジャンクション[iii]がある事でそれらの事柄を気にすることなく、また土星は天王星とセクスタイル[iv]、太陽は冥王星とセクスタイルしており民衆が事実を知る事なくしれっと問題は沈静化するのかもしれません。

 

そしてやはり気になるのはIC(イマム・コリエ)[v]

ICと太陽、海王星、水星、金星がスクエアでアスペクト[vi]しており、ジュノー[vii]、冥王星とICで変則YOD[viii]を形成。なにかしらの備えをしておいたほうが良いかもしれません。

ICのサインは厳しさを示すやぎであり暑さ、寒さにも注意が必要かもしれません。

何にしても「いつ底がスポッと抜けたとしても不思議でない社会」なので色々な事に用心し、感謝を伝えたい人には常に感謝を、愛を送りたい人にはそっと心を、大切な人といがみ合ったままにならぬようにしたいものです。

なお春分図は2025年の春分図を読み解いており2025年の春分から先のメッセージとなります。

 

 

[i] 今世に取り組むべき課題

[ii] ひとつの星座に3つ以上の天体が存在する状態

[iii] 天体がぴったりと重なっている状態

[iv] 天体同士が60°の角度になること

[v] 家庭、家族、家、無意識下の影響を現す

[vi] 天体の角度のこと

[vii] 火星と木星の間を約4.3年の周期で運行する小惑星

[viii] 2つのインコンジャクト(150度)と1つのセクスタイル(60度)を形成する複合アスペクト