今回で第2回目となります「千夜物語で百物語」
連日続いている暑苦しい夏が、
少しでも涼しくなれますように。
それではこちらから
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百物語 第2夜
「通り道」
戦後すぐに建てられ
今は取り壊されてしまった田舎の民家での話。
土間が広く以前は耕作の為の牛が飼われており、
北側にある台所も土間で大きなかまどがあった。
かまどの横には勝手口があり、
廊下をはさんだ先に2階への階段がある。
夏場は台所から登った階段の先の2階の部屋の窓をあげておくと
風が吹き抜けて涼しく過ごすことができたそうだ。
寝苦しい暑い夏の日の夜、
クーラーの無いその部屋の男は吹き抜ける風を最大限利用しようと
勝手口、階段、部屋の窓の一直線に風が吹き抜ける場所に布団を敷いて横になった。
襖があり部屋の出入り口にあたるのでそこを避けていたのだが暑さに負けたという。
予想通り吹き抜ける風は心地よくすぐに眠りに落ちた。
が、しばらくするとギッギッと階段を登ってくる音で目が覚めた。
階段をゆっくり踏みしめる音はだんだん近づいてくる。
「こんな時間に誰が?明かりもつけずに」
そう思った刹那、
黒く大きな影が寝ている男に覆い被さった。
何をするわけでなくのしかかり身体の自由を奪う。
声も出せず耐えるしかない。
吹き抜ける風もピタリと止まり嫌な汗で全身じっとりしてきた。
どれくらいの時間が経ったのだろう
木枠のガラス窓を鳴らすような強い風が
急に吹き抜け影はかき消すように消えていった。
文章:河本 享
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次回、第3夜は、明日の更新となります。